16.07 カメラリポート ~巣鴨とげぬき地蔵尊・遠刈田系伝統こけし展示販売・実演~

2016-07-07佐藤正廣,小笠原義雄,早坂政弘Kokeshi Second Angle,こけしのドラマトゥルギー,こけし道中,遠刈田系,佐藤正廣,小笠原義雄,早坂政弘

7月1日より5日まで東京巣鴨のとげぬき地蔵尊(高岩寺)で開催された「第9回東北復興支援・遠刈田系伝統こけし展示販売・実演」に出かけてまいりました。

今回は仙台近郊に在住の工人が東京に集まりました。ちなみに秋開催の実演会は遠刈田周辺に在住の工人をお招きするとのことです。

私が出かけた際には、小笠原義雄工人、佐藤正廣工人、早坂政広工人の3工人がロクロ挽きや描彩の技を披露されていました。お話をお伺いしたところ「白蝋とカルナバ蝋による艶の違い」、「使っている染料の変化」、「写しや復元で考える原作者の心境」といった技法に関することから、先月オープンした仙台駅ビル「S-PAL」の話題に至るまでとても興味深く聞かせていただきました。

信徒会館入口でお迎えする森勇一さん(黒石市)製作のこけし灯籠。
各工人の作風をみごとに捉えていて毎回感心します。

潤いのある眼で来場者をお迎えする早坂政弘工人の作品。
早坂工人は青葉区芋沢に工房を持ち、青葉城の本丸会館で実演販売を行なっていますが東京での実演は初めて。伝統こけしだけでなく木地玩具のレパートリーも多く、今後のご活躍が注目されます。


左のふてくされた感じの子が気になりますね…。
佐藤正廣工人作、磯谷直行型三様。

磯谷直行工人は1900年の生まれで福島の中ノ沢で木地業を営んでいましたが、崖から転落し33歳の若さでこの世を去りました。
正廣工人が直行型を手がけたのは、古生物学者でありこけし研究に大きな功績を残した鹿間時夫氏が復元を依頼したのが始まり。原作者がどんな心境で作ったのかイメージすることが大事だそうですが、若くしてこの世を去り、詳しい人物像について知る人がいない状況で原作品だけをたよりに復元を進めていくのはとてもむずかしい仕事です。

正廣工人のもとに復元を依頼されることは結構あるそうで、原作品と寸分違わず作ることを重視する向きもあるけれども、復元する人が原作品に対して何を感じ、思い、考えて作ったかが現れているところが復元作品の愉しみ方だと理解しました。

端正な顔立ちと衣装の質感がたまらない小笠原義雄工人作。
ビビリ(ザラ挽き)の幅を変えることで変化のある幾何学模様を作り出す技巧派作品。
目で眺めるだけでなく、手に持ったときの感触も愉しめる作品です。

義雄工人の変わりこけしといえばこのせつなそうな顔。