
『伝統こけしの店「おもと」の思い出』(江草エスリー由香・著、スローウォーター、2025)を読みました。こけし小売店の店主が50年かけて見てきた、工人と愛好者の人間記録です。
横須賀線・北鎌倉駅近くに「おもと」というこけし専門店があります。
1975年の開店以来、店主が目撃してきた作者・愛好者の姿。この本では著者がひたすら聞き手に徹して記録しています。
こけし関連書籍といえば作品図録や体系を解説したもの、あるいは愛好者による蒐集遍歴を一人称で記述したものが多い中、本書は「店主の目線」という独特の視点で書かれています。
とりわけ読み応えがあるのは、愛好者たちの人間模様を描いた章です。一本のこけしに一喜一憂し、ときには同好に嫉妬をいだく…きれいに言えば「静かに、熱い」けれども、一節から滲み出る「業」の深さに同じ趣味を持つものであっても圧倒されてしまうのです。
ただ、本書に登場するかつての愛好者から学ぶのは、群れずつるまず自らの時間と居場所を追求する、すなわち「孤独を飼い慣らす」ことです。独り身であれ家族持ちであれ、自分の時間をいかに豊かに過ごすかを模索する姿は、SNS全盛の現代だからこそ着目したいところです。
こけしが持つ包容性・包摂性。時代を超えて支持されている理由はそこにあるのではないかと、本書を読んで考えました。






