16.11.11 カメラリポート ~巣鴨とげぬき地蔵尊・遠刈田系伝統こけし製作実演~
晩秋の冷たい小雨が降る中で初日は始まりました。
11月11日より15日まで東京巣鴨のとげぬき地蔵尊(高岩寺)で開催された「第10回東北復興支援・遠刈田系伝統こけし製作実演」に出かけてまいりました。
(→本年7月に開催された第9回の模様はこちらをごらんください)
今回は遠刈田温泉周辺に在住の工人が東京に集まり、こけしの製作実演、作品や物産の販売が行なわれました。
会場内展示販売スペース。
ごらんのようにさまざまな模様や表情の作品があって、どれを選ぼうかと毎度悩みます。
11日の参加工人は
- 佐藤哲郎工人
- 佐藤勝洋工人
- 佐藤忠工人
- 平間勝治工人
- 佐藤早苗工人
- 日下秀行工人
と作品に定評のある作者が集まっており、幅広い世代のファンに応えたメンバー構成になっております。
素早く木地を挽く青根地区の佐藤忠工人。
仕上げ磨きには「木賊(とくさ)」を使っておりました。
手に持っているのは蜜蝋のブロックで、ろくろを回しながら蝋をつけていきます。
白蝋も持参してきて、一部の作品には白蝋をつけておりました。
ちなみに白蝋は蝋引きしたのちに布などで磨くと美しい光沢が出るそうです。
それでは展示作品の一部をご紹介したいと思います。
作品群では周治郎系列に入ります。
どの作品も安定感があること、それが高い技術の証です。
早苗工人の作品は「聡明そうな女学生」の雰囲気があって、複数本を並べると教壇から生徒たちを見渡したときの感覚を思い出します。
作品群では吉郎平系列に入ります。
肩の部分に井桁模様の入った「こまくさ模様」は哲郎工人のオリジナル。
丁寧に磨き上げた表面部分はなかなか触り心地がいいものです。
遠くから見るとポカーンとした面持ちをしていますが、そばに近づいて見つめているとこけしから語りかけてきます。
佐藤忠工人による鈴木幸之助型です。
展示されている作品を見たとき「なぜ遠刈田系の製作実演なのに肘折系があるのだろう?モデルになっているのは誰の作品なのだろう」と思い、忠工人に尋ねてみたところで幸之助工人の名前を聞くことができました。
鈴木幸之助工人(1888-1967)は笹谷生まれの青根育ちで、肘折で木地を挽いていました。忠工人の父親、佐藤菊治工人(1895-1970)と同じ師匠(佐藤重吉工人)というつながりから幸之助型を作っています。
作品群では治平系列に入ります。
日下秀行工人作、佐藤茂吉型です。
佐藤茂吉工人(1860-1943)は遠刈田こけしの一時代を築いた工人ですが、現存する作品はほとんどなく、秀行工人はさまざまな文献資料を研究して製作したそうです。作者の筆遣いのクセだけでなく、筆の使い込み具合まで観察しているそうです。
秀行工人に写しの考え方について聞いたところ、「原作品に忠実であること」を主眼に製作しているとのこと。原作品にはそれを作った工人の製作環境や心境が含まれているから、自身の解釈を必要以上に含めず、作品そのものをよく観察して余すところなく写し取れるかが重要であることをお話から理解しました。
ちなみに秀行工人の師匠は哲郎工人です。