こけしはタイムカプセル。1本のこけしの中には、作り手や街の、そして自分自身のドラマが凝縮されている。

Kokeshi Second Angle,鳴子系高橋宣直

流し目で微笑されたらたまりません。
鳴子温泉古戸前・高橋宣直工人の作品です。前回記事は下記をご参照ください。

紅葉の描きかたは見る人の想像力を膨らませてくれます。
緑の葉が赤く染まり始めて、風に揺れる姿…10月末から11月初旬、紅葉シーズンが待ち遠しいと思える頃の風景と感じました。

以前、胴模様に紅葉を描いた高橋正吾工人作を見たことがあります。
緑の葉が舞い落ちるように逆さに一葉描かれていました。枝に緑の葉が残る様子を描くこの作品と対比してみると、僅かばかりの時の差を読み取ることができます。
木地は描彩にあわせてイタヤカエデを用いています。

4、5枚目の画像はパート1で紹介した作品との比較です。

Kokeshi Second Angle,弥治郎系富塚由香

2024年11月9日〜10日にかけて東京巣鴨のとげぬき地蔵尊高岩寺で開催された「東北地方復興支援 伝統こけし展示・頒布会」の会場では、岩附義正工人、富塚由香工人、吉野誠二工人が来場者にこけしの解説をしていました。
3工人に共通するのは「いずれも埼玉県在住の伝統こけし工人」。埼玉は隠れたこけし産地です。

そのひとり、富塚由香工人は蕨市に在住し、自宅の一室に工房を構えて製作しています。住宅街の中にあるので、ここにこけし工房があることを地元住民も知らないとか。
余談ながらこの場を割いて市内風景の一部をご紹介します。

埼玉県蕨市内風景-1 和楽備神社の七夕
埼玉県蕨市内風景-2 緑の残る錦町の一角
埼玉県蕨市内風景-3 旧中山道沿いの割烹料理店にて

さて今回、表題の作品を入手したのは「つややかな頭部の紫」に惹かれたからでした。
この色、初夏の採れたての茄子を連想して新鮮さを感じます。

同じ系統作品での発色をくらべて見てみましょう。同じ紫色でも工人によって色味は異なりますが瑞々しさを感じる発色であることがわかるかと思います。

この瑞々しい弥治郎の紫だけでなく、甘濃ゆい土湯の赤とそれぞれの産地独特の色味はありますが、どのような色素の配合で出しているのか、興味が湧くところです。