「人形の髪の毛が勝手に伸びる」といった現象はときにオカルトネタの材料にされて怖がられることが多いのですが、
「人毛や化学繊維でできた人形の髪の毛は温度や湿度、あるいは経年によって伸縮する」
という理屈を知ると「ああ、そういうことか…」となって、むしろ怖いのはおのれの無知であることを思い知らされます。
ふだんは日焼け防止にレースのカバーを棚にかけていますが、通気もかねてカバーを外してみたところ…
鎌田文市工人作(1968年・三八型。以下、文市さん)が左を向いて右側の新山吉紀工人作に語りかけていました。
収集家の方が「こけしがひとりでに隣の仲間に話しかけている」現場を目撃する例は結構あるそうですが、拙宅のコレクションでも同じ現象が起きるとけっこう驚くものです。
実はこの文市さん、底面の据わりがよろしくなくてちょっとした振動で揺れるのです。
ためしに棚を少し揺らしてみたところ、文市さんはカタカタ言いながら微かに回転しました。
振動の原因は…?
棚は畳敷きの部屋に設置しています。部屋の中を歩いたときの振動が畳に伝わり、棚にも伝わっていきます。
棚の中の文市さんはその揺れを感じて少しずつ左に回っていったと考えられます。
さらに先日発生した震度3の地震も振動の原因のひとつでしょう。
それにしても角度にして約80度、うまく回ったものだなと感心します。
飾るときは正面を向けることがほとんどなので「たまには話し相手がほしかったんだな…」と想像するのも楽しいかなと思います。