「こけし辞典」や「カメイ工人録」に掲載されていない 高橋仁 工人の作品です。
「こけし系図」には1935年生まれで早坂隆工人のお弟子さんとして記載されています。
見た目は鳴子系のこけしそのものなのですが、手にとってみるといたるところに特徴があります。気づいたところでは…
- 材料がイタヤカエデ
- シャープな肩
- 回らない首
- 「猫鼻」ならぬ「し」の字鼻
- 鬢の筆運び
といった箇所です。
決定的なのは胴の下側面に書かれた「上山」の文字。これは山形県上山を意味します。
調べてみると市内旭町に「上山じんこけし」という屋号の事業所が登録されており、おそらくここで作られたと考えられます。
上山は蔵王高湯系の産地として知られておりますが、鳴子系との接点も少しあって明治晩年に小松留三郎工人が移り住んで工場を創設したこと、開業数年間は高橋武蔵、櫻井万之丞の各工人が手伝いにきていたという話が残っています(→辞典. p144.)。