技術者には「自らの持つ技術を目に見えるように積極的にアピールしていく、というかしたがるタイプ」と、「自らの持つ技術をさりげなく、というかこっそり仕込むタイプ」がいるように思います。
伝わる三世代の頭頂 〜直蔵系列作品より〜
こけしを頭のてっぺんから眺めるとこれまた楽しいものです。
伝統こけしが何本か並んでいるのを見て「どれも同じように見えた」頃が私にもありました。鳴子温泉の某店主から「見ているうち次第に分かってくるものだ」と教わってから注意深く眺めていくうち、少しずつではありますが「違い」を理解していけるようになりました。
が、鳴子系だけは「この作品はどの系列なんだろう…?」としばらく悩み続けていました。その悩みを緩やかにしたのは「頭頂部分を集めた写真」に触れたことでした。頭頂は系統・系列・作者ごとに多彩な模様があり、同じ作者でも作られた年代によって描き方のバリエーションがあるなど、興味を惹く要素がたくさん詰まっている部位でもあります。
鳴子系では頭部の前髪まわりに赤色で描かれる模様を「水引手」と呼んでいます。水引手はもともと御所人形の前髪を後ろに束ねて結ぶ赤白の紐の描彩のことを指しますが、こけしに描かれた前髪の飾り模様にも同様に表します(関連→Kokeshi Wiki 「水引手」)。
画像は直蔵系列の直系3世代作を並べてみたものです。
右は高橋武蔵、左が高橋正吾、中央が高橋宣直の各工人作。
この放射状模様は鳴子温泉湯元の「老舗・高亀」の流れをくむ作者に見られる模様です。
もっと細かく見ていくと、放射角や髪の毛とのクロスのさせ方などに違いがあることがわかりますが、それについてはもう少し研究をしてみてから触れてみたいと思います。
先日「なるこ 人・技・ものがたり(鳴子温泉観光協会発行・1999.6月)」をという冊子を手にする機会があったのですが、冊子に掲載されていた正吾工人親子の写真をみたとき、ふとこの作品の並びが自画像のように思えました。