聡明さを感じて 〜新地・佐藤英太郎 工人作より〜

2020-11-04佐藤英太郎Kokeshi Second Angle,遠刈田系,佐藤英太郎

こけし_遠刈田_佐藤英太郎工人作、1970年頃-1.
新地・佐藤英太郎工人作、1970年頃-1.

近年は要領の良さや効率の良さに重きが置かれたり、中身がないのに言った気になっているキャッチコピーのような空虚なフレーズがもてはやされたり、その反対に本人が到底理解しているとは思えないボキャブラリーをいたずらに羅列することで他者を圧倒させ、自分の立ち位置を保とうとする政治家や財界人や自称評論家がテレビ画面やパソコンのモニターだけでなく、手元のスマートフォンや巷間にも見かけるにつれ肉体的だけでなく心身的な疲労も感じるわけです。

そこで手にしたのがこのこけし。

聡明な感じのする高等女学生(旧制)、といった面持ちがします。
この「聡明」ということば、近ごろ聞かなくなりましたね。

「利口」や「賢い」も同じく頭の良さを意味していることばなのですが、抜かりなく要領がいいさま、口が巧いといった面が強調されてしまいます。聡明の意味するところには小手先ではなく、生きている間に積み重ねられた所作や筋道、品性の高さが含まれていると考えます。

もう少し表情を眺めてみます。
眼に輝きを感じます。二筆で眼点を描いているとそう感じるのでしょう。
英太郎工人作には上唇と下唇をつなげて描くものが多いですが、離れて描かれていると引き締まった印象がします。この眼と唇の面描に好奇心の旺盛さと品性の高さを感じることができます。

眺めていると不思議と元気が湧いてくる、見つめていると希望を感じる、そういうこけしに出会えるととても嬉しいです。

こけし_遠刈田_佐藤英太郎工人作、1970年頃-4
新地・佐藤英太郎工人作、1970年頃-4.

余談ながら底面には「三代目直助 英太郎」の署名があります。
このこけしを譲っていただいた方によれば、英太郎工人が1969年頃に遠刈田新地へ戻り製作を復活した頃の作品とのこと。


次の画像はお遊びですのでお好きな方だけごらんください。

こけし_遠刈田_佐藤英太郎工人作、左1982年、右1970年頃
新地・佐藤英太郎工人作、左1982年、右1970年頃.