Kokeshi Second Angle,遠刈田系佐藤英太郎

こけし_遠刈田_佐藤英太郎工人作、1970年頃-1.
新地・佐藤英太郎工人作、1970年頃-1.

近年は要領の良さや効率の良さに重きが置かれたり、中身がないのに言った気になっているキャッチコピーのような空虚なフレーズがもてはやされたり、その反対に本人が到底理解しているとは思えないボキャブラリーをいたずらに羅列することで他者を圧倒させ、自分の立ち位置を保とうとする政治家や財界人や自称評論家がテレビ画面やパソコンのモニターだけでなく、手元のスマートフォンや巷間にも見かけるにつれ肉体的だけでなく心身的な疲労も感じるわけです。

そこで手にしたのがこのこけし。

聡明な感じのする高等女学生(旧制)、といった面持ちがします。
この「聡明」ということば、近ごろ聞かなくなりましたね。

「利口」や「賢い」も同じく頭の良さを意味していることばなのですが、抜かりなく要領がいいさま、口が巧いといった面が強調されてしまいます。聡明の意味するところには小手先ではなく、生きている間に積み重ねられた所作や筋道、品性の高さが含まれていると考えます。

もう少し表情を眺めてみます。
眼に輝きを感じます。二筆で眼点を描いているとそう感じるのでしょう。
英太郎工人作には上唇と下唇をつなげて描くものが多いですが、離れて描かれていると引き締まった印象がします。この眼と唇の面描に好奇心の旺盛さと品性の高さを感じることができます。

眺めていると不思議と元気が湧いてくる、見つめていると希望を感じる、そういうこけしに出会えるととても嬉しいです。

こけし_遠刈田_佐藤英太郎工人作、1970年頃-4
新地・佐藤英太郎工人作、1970年頃-4.

余談ながら底面には「三代目直助 英太郎」の署名があります。
このこけしを譲っていただいた方によれば、英太郎工人が1969年頃に遠刈田新地へ戻り製作を復活した頃の作品とのこと。


次の画像はお遊びですのでお好きな方だけごらんください。

こけし_遠刈田_佐藤英太郎工人作、左1982年、右1970年頃
新地・佐藤英太郎工人作、左1982年、右1970年頃.

Kokeshi Second Angle,こけしのドラマトゥルギー,土湯系高橋通,鯖湖こけし

原ノ町・高橋通工人作、2020.7・側面
原ノ町・高橋通工人作、2020.7・側面

静と動だとか、線香花火とすすき花火だとか、コントラストとか対比だとか、不二家ノースキャロライナとうずまきかりんとうだとか、いろいろなことばが浮かんでまいります。

人並みのことばかもしれませんが、これを見なければ思い浮かばなかったと思います。

洗練されているものを目にしたとき、背筋が伸びて、頭の中に広がりを感じさまざまなことばやイメージが湧いてきます。
「かわいい」以外のことばが想起できるこけしに出会えるとしばしの希望を感じますし、そういうこけしがこの閉塞感漂う世の中が必要としているものだと考えます。

原ノ町・高橋通工人作、2020.7・正面
原ノ町・高橋通工人作、2020.7・正面

西田記念館所蔵の忠蔵工人作を参考に製作されました。

原ノ町・高橋通工人作、2007・側面
原ノ町・高橋通工人作、2007・側面

黒の背景がとても似合うこけしです。

ピンとした空気を感じます。
渦巻状と鬢の下に及んだかせ模様が遊び心を感じます。

原ノ町・高橋通工人作、2007.7・正面
原ノ町・高橋通工人作、2007.7・正面
原ノ町・高橋通工人作、2007.7・全景
原ノ町・高橋通工人作、2007.7・全景