Kokeshi Second Angle,こけしのドラマトゥルギー,鳴子系利右衛門系列,高橋正子,高橋義一,高橋輝行

筆者は「意識して特定の種類を集める」ときと、「気づいたら集まっていた」ときのパターンがあります。

面白いのは後者でビンゴに当たったような気分になります。「こけしが仲間を呼び寄せた」と表現する方もおります。

鳴子_義一_輝行_正子

「気づいたら集まっていた」一例がこちら。「高勘まつ子一族の小寸トリオ」と呼びましょうか。

「鳴子系・利右衛門系列」に分類されるもので、写真の作品は高橋勘治工人の孫、まつ子工人の一族によって製作されました。左から高橋義一、輝行、正子の各工人作で年代は2015〜2016年。鳴子では3〜3.5寸の大きさのものは「たちこ(立子)」と呼ばれていました。

目のバリエーションがなかなか楽しいです。
左の義一工人作は眼点を描かない「一筆目」とも読み取れるし、「描かれているのは眉毛で ”微笑みすぎて目がない" 状況」とも読み取れます。
丸みを帯びた木地挽きと力強さを感じる描彩で小さいながらも重みを感じるのが特徴です。

Kokeshi Second Angle,こけしのドラマトゥルギー,鳴子系直蔵系列,高橋宣直,高橋正吾,高橋武蔵

こけしを頭のてっぺんから眺めるとこれまた楽しいものです。

伝統こけしが何本か並んでいるのを見て「どれも同じように見えた」頃が私にもありました。鳴子温泉の某店主から「見ているうち次第に分かってくるものだ」と教わってから注意深く眺めていくうち、少しずつではありますが「違い」を理解していけるようになりました。

が、鳴子系だけは「この作品はどの系列なんだろう…?」としばらく悩み続けていました。その悩みを緩やかにしたのは「頭頂部分を集めた写真」に触れたことでした。頭頂は系統・系列・作者ごとに多彩な模様があり、同じ作者でも作られた年代によって描き方のバリエーションがあるなど、興味を惹く要素がたくさん詰まっている部位でもあります。

鳴子_高亀_頭頂鳴子系では頭部の前髪まわりに赤色で描かれる模様を「水引手」と呼んでいます。水引手はもともと御所人形の前髪を後ろに束ねて結ぶ赤白の紐の描彩のことを指しますが、こけしに描かれた前髪の飾り模様にも同様に表します(関連→Kokeshi Wiki 「水引手」)。

画像は直蔵系列の直系3世代作を並べてみたものです。
右は高橋武蔵、左が高橋正吾、中央が高橋宣直の各工人作。
この放射状模様は鳴子温泉湯元の「老舗・高亀」の流れをくむ作者に見られる模様です。
もっと細かく見ていくと、放射角や髪の毛とのクロスのさせ方などに違いがあることがわかりますが、それについてはもう少し研究をしてみてから触れてみたいと思います。

鳴子_正吾_宣直_武蔵

鳴子_正吾_宣直_武蔵先日「なるこ 人・技・ものがたり(鳴子温泉観光協会発行・1999.6月)」をという冊子を手にする機会があったのですが、冊子に掲載されていた正吾工人親子の写真をみたとき、ふとこの作品の並びが自画像のように思えました。