Kokeshi Second Angle,津軽系奥瀬鉄則

こけしをいろいろな角度から見る楽しさに気づいたのは、奥瀬鉄則工人の作品がきっかけでした。
2014年の秋、鳴子温泉の喫茶店「おかしときっさ たまごや」の店中に飾ってあったこのこけしを客席のテーブルに置き、くるくる回して見ていたときです。
ふと後ろ姿のうなじというか、刈り上げのキュートさに気づきました。

さらに少し回してみると振り向きざまに微笑む表情が…これもまたキュートだと気づきました。昔の切手にあった菱川師宣の「見返り美人」のような角度です。

2024年9月に開催された東京こけし友の会例会で仙台の佐藤康広工人が話していた「こけしをいろんな方向から見てみてください」という一節を頷きながら聞いていました。いろんな角度からこけしを見ていると、正面で見たときとはまた違う、魅力的な表情に出会うことができます。

…とこんな話をしていたところ、東京こけし友の会元会長のYさんが「バックシャン※とはこけしのためにあるようなことばだ」とコメントされたのがとても印象に残りました。
いいこけしは絵よりも姿を見ればわかります。

※バックシャン(Back Schön)…和製英語+独語。旧制高校の学生が後ろ姿美人の人をこのように表現したそうです。一方で「背面は美しいが正面は…」という意味も含んで言及されることもあり、本人に直接言うと失礼にあたるケースもありますが、本文ではその意味で用いたものではありません。

Kokeshi Second Angle,土湯系高橋忠蔵

原ノ町時代末期の雰囲気が残る70歳作。
遠目な感じでいるけれど、こちらから問いかけていくとひとつひとつ応えてくれるようなまなざしです。

こちらは原ノ町に在住していた最後の頃の忠蔵工人作。底面の署名でも表示しています。
この作品を製作した同年春、息子・高橋佳隆工人の住む東京都日野市に引っ越すことになります。